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食の安全と安心   vol.8  金沢和樹

kanazawa.JPGプロフィール                     
神戸大学教授(農学博士)
大学院農学研究科 
食品・栄養化学

コープこうべ商品検査センター顧問

ダイオキシン

私たち周辺の環境に存在するダイオキシンは1000種類以上あります。工業的につくられたものもありますが、物を燃やしたときにもできます。現在は、これ以上ダイオキシンが増えないように、工業的につくらない、廃棄物を燃やすときはダイオキシンができない温度で燃やすなど、厳しく規制されています。それでも過去につくられたダイオキシンが私たちの周辺に残っており、ときおり私たちを不安がらせます。しかし、ダイオキシンはそれほど怖い物でしょうか。もちろん、ダイオキシンは無いほうがいいのですが、少しでもあれば私たちの健康を害するのでしょうか。それをここで考えてみます。

ダイオキシンの毒性とは

ヒトだけでなくすべての動物は、自分のからだの役に立たないものをからだの外へ捨てる手段をもっています。その代表的なものがダイオキシンを捨てる経路です。ダイオキシンは食べ物と一緒にからだの中に入ってきます。すると、からだは不要なダイオキシンを捨てようとするのですが、たいへん強固な形で、しかも水に溶けないダイオキシンは、大半が水でできている尿へ捨てることができません。そこで、からだはダイオキシンを捨てることができる形に変えようとします。まず、からだはダイオキシンを受容体で捕まえます。受容体は「捕まえたぞ」という情報を遺伝子に伝えます。遺伝子はダイオキシンの強固な形を変える酵素と、形を変えたダイオキシンを水に溶けやすくする酵素をつくるようにからだに命じます。ところがここで困った問題が生じるのです。形を変える酵素はすぐにつくられるのですが、水に溶けやすくする酵素がつくられるには2日ほどかかるのです。そしてダイオキシンは形が変わるとたいへん毒性が強くなるのです。つまり、からだの中に、毒性が強い形に変わったダイオキシンが2日間ほどとどまることになります。そして、このダイオキシンが遺伝子に悪いことをして変異を起こさせます。結果が発がんです。
ダイオキシンはからだの役に立たないだけで、毒性はないのですが、私たちのからだはダイオキシンを捨てようとして、逆にダイオキシンを毒性が強い物質に変えてしまうのです。

野菜・果物・緑茶を摂っていればダイオキシンの不安はなくなる

しかし、ダイオキシンの毒性を心配することはありません。日常食品に含まれているフラボノイドという成分を摂れば、ダイオキシンが毒性を発現するのを十分に抑えることができます。フラボノイドはダイオキシン受容体に一時的にふたをします。ダイオキシンが受容体に捕まえられるのを止めるのです。そうすると、「捕まえたぞ」という情報が遺伝子に伝わりませんから、ダイオキシンを毒性が強い形に変える酵素はつくられません。つまり、ダイオキシンの毒性は現れません。
 しかし、フラボノイドが受容体にふたをするのは一時的なことですから、しばらくするとふたが外れて受容体はダイオキシンを捕まえ、遺伝子に情報を伝えます。するとダイオキシンの形を変える酵素がつくられるのですが、フラボノイドはこの酵素にもふたをするのです。そして、もう一つ良いことをします。からだの中にフラボノイドが入ってくると、からだはフラボノイドを水に溶けやすくして尿に捨てる酵素をつくるのです。この酵素はダイオキシンを尿に捨てる酵素と同じ酵素です。つまり、フラボノイドは、ダイオキシンを毒性が強い形に変える酵素がつくられるのを抑えておき、その間にダイオキシンを尿に捨てる酵素をつくるのです。ダイオキシンを捨てる酵素がつくられるころには、ちょうどダイオキシンの形を変える酵素もつくられるようになり、毒性が強い形のダイオキシンがからだに溜まることなく、尿に捨てられます。
 フラボノイドとは、化学の名前でいうとケルセチンやカテキンなどですが、私たちが普段食べている野菜、果物、緑茶にはたくさん含まれています。とくにたくさん食べなくても普通に野菜などを食べ、緑茶を飲んでいれば十分にダイオキシンの毒性を抑えてくれます。私たちの食品に含まれているダイオキシンはフェントモルという量で、フラボノイドがからだの中に入ってくる量はナノモルです。この量の差はフラボノイドの方が圧倒的に多く、百万倍です。
 食事とともにからだに入ってくるダイオキシンの毒性を、薬で抑えることはできません。同じ食事の成分で抑えるしかありません。その意味で、私たちが日常食べる植物の中に毒性を抑える成分が入っているということは自然の理にかなっています。ほぼすべての生物がダイオキシンを捕まえる受容体を持っているのですが、このことは、ダイオキシンが太古の昔から地球上に存在したことを意味しています。地球上の生物はその毒性を抑えるために、植物を食べていたともいえます。植物はフラボノイドの他にも、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、からだに好ましいはたらきをする成分を豊富に含んでいます。普段の食生活で、できるだけ多く野菜・果物・茶を摂るのが、いろいろな意味で好ましいことです。


◆次回は「BSEについて」です。