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食の安全と安心  vol.9 金沢和樹

kanazawa.JPGプロフィール                     
神戸大学教授(農学博士)
大学院農学研究科 
食品・栄養化学

コープこうべ商品検査センター顧問

BSEについて

 肉牛のBSEは一時期大きな不安をもたらしました。そして、今でもまだ肉製品の輸入が制限されています。BSE不安はまだ続くのでしょうか。解決策はないのでしょうか。

BSEはなぜおこったか

 BSEは異常プリオンというタンパク質が牛に感染しておこるといわれています。このプリオンは餌に混じって牛の口から入るタンパク質です。微生物ではありません。微生物ならば体内に入ると自己増殖する能力で次々と増え、牛のからだを犯します。プリオンにはこの自己増殖の力はありません。プリオンが混ざっている餌を食べた牛だけが病気になるのです。しかし、これも通常の牛の飼育では起こりえないことです。タンパク質は仮に異常であっても、日常の食品の中に含まれているタンパク質と同じです。口から食べたタンパク質はすべて、からだの中に取り込まれる前に消化を受けるのです。消化とはばらばらの小さな断片に壊すことですが、消化を受けたタンパク質は、良いはたらきも、悪いはたらきも、何のはたらきもしません。タンパク質が何のはたらきもしないようにしてから自分のからだの中に取り込むということは、すべての動物に共通の公理です。食べることで生きている動物は決して他人が使っていたものをそのまま使うことはしません。そのまま使うと、自分のからだがその他人のからだになってしまうからです。だから十分に消化して壊してしまってから取り込むのですが、仮に、他人が使っていたタンパク質が少しでも体内に入ってくると、からだはさらに抗原抗体反応という方法でそれを除きます。食物アレルギーは、未消化のタンパク質がからだに入り込むのを抗原抗体反応で防いだ結果おこった現象です。
 では、なぜ牛は異常プリオンをからだの中に取り込むのでしょうか。タンパク質を消化せずにからだの中に取り込むという例外が一つあります。自分のからだと同じ、あるいはよく似たタンパク質を食べたときです。つまり、共食いです。共食いすると、はじめの数回は消化してから取り込みますが、何回か食べてそれが自分のからだと同じようなタンパク質だと認識すると消化せずに取り込むようになります。消化にはたいへん大きなエネルギーが必要で、体力を消耗するからです。私たちが食事をして食べ物を消化すると体が温まるというのがこれです。消化に大きなエネルギーを使うので体で熱が生じたのです。自分のからだと同じタンパク質ならば、わざわざエネルギーを使ってそれを壊さず、そのまま取り込んで再利用する方が効率的です。BSEは異常プリオンを壊さずに牛がそのままからだの中に取り込んだ結果おこった病気です。
 BSEの発症はイギリスのスコットランドです。飼育している牛に、処分した牛の骨粉を食べさせたのです。つまり、共食いをさせたのです。牛は消化にエネルギーを使うことなく骨粉のタンパク質を取り込み、それでからだをつくりますから、エネルギーも節約できたいへん生育がはやく、短い期間で牛が育ちました。また、骨粉はもっとも栄養バランスに富んだからだの組織です。これも成長を助けました。短期飼育で牛を売れるので農家の収入はあがりました。しかし、そのうちに骨粉の中のプリオンが、原因は不明ですが、異常なプリオンに変わっていたのです。そしてこの異常プリオンがそれを食べた牛のからだの中にそのまま入り、牛の脳に病気をおこしたのです。

BSE不安は容易になくすことができる

 農業の歴史が古い民族は、決して共食いさせるような生産方法は使いません。しかも、草を食べて育つ牛に肉を食べさせるようなことはしませんでした。これが食文化です。BSEはしてはならない生産方法を用いた結果おこった病気です。解決策は、言うまでもなく、共食い飼育を止めればいいのです。そして、将来は、牛に限らず、できるだけ共食いをさせるような飼育、養殖方法は避けることです。共食いをさせると、その生物種に特異な病気が生じます。畜産業や農業は食文化を護って地道に行うものです。